コナンくんたちと一緒に、楽しく日本史を勉強できる!そんな青山剛昌先生以外による児童向け学習漫画・『日本史探偵コナンシリーズ』。前回の記事では、シーズンⅠの飛鳥時代編を紹介した。
今回は、Ⅰの後に出た外伝<アナザー>の『国宝編 背中合わせの両雄<マエストロ>』を紹介しよう。
この国宝編では少ない出番ながら、おそらく学習漫画版コナンにおいて初めて、あの安室透が登場する。
そう、コナンくんたちの前に謎の神様が現れ、過去の時代に飛ばされてしまった「時の漂流者=タイムドリフター」を助けるというぶっ飛んだ設定の日本史探偵シリーズに、超絶人気キャラクターの安室さんが参戦してしまうのだ。クラウドがスマブラに参戦するぐらいの衝撃だ。
いいのだろうか!?私はいいと思う!!
さて、本編はコナンと少年探偵団トリオがポアロで話しているところから始まる。「母ちゃんが捨てろって言うんだよ、ひでーよな」と昔使っていたオモチャを一箱分持ってきた元太。なぜそれを喫茶店に持ち込もうと思ったのか知りたい。
そこへ「おや?面白いものを持ってきてるね」と、いかにもミステリアスな強キャラが出てくる時に言いそうな台詞を引っさげ、安室さんが登場。「あっ!安室さん!」と、ウエイターである彼がここにいるのは何もおかしいことではないのに、集中線を背負って驚くコナンくんたちがなんか面白い。
それにしても、描いているのは青山先生でも『ゼロの日常』『警察学校編』の新井隆広先生でもないのに、すごくイケメンだ……顔がいい……。こうした原作者以外による外伝的漫画の描き手で、イケメン扱いされてるキャラをちゃんと美形に描ける人は評価されるべきなのだ。というのは適当な持論だ。
「これはナンダイから発売された怪盗キッドの限定版フィギュアだね…ファンが欲しがるプレミアものだ…」
怪盗キッドのフィギュアを鑑定する安室さんが見られるのは日本史学習漫画だけ!!それあなたの前で宮野志保に変装してた人なんですよ知ってる!?
というか、いくらキッド様がかっこいいからって、ここは犯罪者のフィギュアが発売されて子供に買い与えられる世界だったんだ……。しかも安室さんの言葉からして、キッドファン相手にめちゃくちゃ儲かっていると思われる。もしかしたら園子も持っていたりしてねw
そんな安室さんを見たコナンくんは、心の中で(めんどくせーヤツがきたな…)と散々な言い様をしていて笑ってしまう。『ゼロの執行人』で命助けてもらっただろ!!でも事情があったとはいえおっちゃんを逮捕させたのもこの人だしな……まあめんどくせーことを呼び込みそうな人ではありますね……。
安室さんの鑑定の結果、キッドのフィギュアを含め高い値がつきそうなのは3つ。あとはガラクタという結果に…いや、むしろ3個も持ってたとか元太すごいな!?昔の愛用品と言っても今6〜7歳なんだから、おさがりでもない限り、大人から見てそう古い物ではないはずだが。君にはコレクターの才能があるんじゃあないかな……
だが、そこでガラクタに混じって、バラバラに壊された仏像の写真が発見される。「これは国宝の金剛力士像だね」と解説してくれる安室さん。本物だとしたら大騒ぎになっているはずだが……。思案するコナンくんを見ながら、何故か試すように微笑んでいる安室さんだった……(序盤の出番終了)
す、すげえ…これこそ、私の見たかった学習漫画における安室透だ!!なんだその好青年の皮を被った「まだ明かせないけどたぶんなんか企んでます」ムーブは!?タイムスリップに関わってんのか!?いいのかこの人をコナンらしからぬSF要素に関わらせて!?もっとくれ!!もっと摂取させろこの世界のあむぴをよォーッ!!あっすみませんちょっと落ち着きます。
さて、博士に相談に行ったところ、「これは過去から送られたもの」「壊されている金剛力士像は完成直前の状態」という話に。「だったらその時代で壊されるのを阻止しよう!」「オレたちにはタイムドリフターズがいるもんな!」と、テンポよく進めてくれる探偵団トリオ。とりあえず自分たちで行かないのは確定事項らしい。
というわけで、今回のタイムドリフターズは、ドッジボールが得意な元気少年・航と、超キレイ好きのお嬢様・華帆。二人は同じ学校ではあるがろくに喋ったこともなかったらしく、キャラクター紹介のページにある通り、水と油のような小学生コンビだ。
時代を超えてコナンくんたちと繋がれるスマホ・探偵団バッジに続く、新アイテムも登場。設定した時代へ飛べる腕時計「タイムワッカ」だ。しかし、博士のうっかりミスによって金剛力士像の完成より17年も前…1186年に飛ばされてしまう。またタイムスリップするにはエネルギーを蓄える必要があるので、しばらくこの時代にいることに。
すると野党たちが現れ、二人は襲われてしまう。航はとっさにその場にあったボールを投げつけ…と思ったら、それは丸まったタヌキだった。
なお後にそのタヌキは、謝る航にいいってことよと言わんばかりに首を振った上、心の声で「ナイスシュート!!」と語りかけ、ウインク&サムズアップした。
えっ…こいつ実は人間なんじゃね…?そもそもこの時代の日本にそんな言葉ないよね!?タイムスリップしてくる時にも登場していたが、最初はリアル調に描かれていたのに、空から降ってくる二人を見て驚いた途端デフォルメされてマスコットキャラ的な姿になったりと、謎の多いタヌキである。
それはさておき、後に金剛力士像を造る若き日の運慶と快慶が、偶然にもそこに居合わせていた。彼らもまた、野党たちの標的にされてしまう。その時助けてくれたのは、サイドテール美少女の静御前、モヒカンの弁慶、そして如月弦太朗みたいな源義経であった。みんな時代を先取りしすぎ。
野党を蹴散らすと、運慶・快慶に激励の言葉を贈り、流浪のヒーローのごとく去っていった義経たち。だが、実は彼らには切ない事情が……。前半の見所であるここは読んで確かめてもらうとして、エネルギーが貯まったことで航と華帆は今度こそ金剛力士像ができる1203年へ。
航は改めて運慶・快慶に事情を話しに行く。一方、単独行動をしていた華帆は、金剛力士像の破壊を企む悪人たちに目をつけられ、彼らの協力者である薬屋の中へ連れて行かれる。自分たちを黙認するよう説得されるも、断る華帆。すると…
悪人A「あれを…」
薬屋「まかせておけ…」
華帆「きゃっ!!」
怪しげな液体に濡れた針を手にした薬屋が、悪人たちに取り押さえられた華帆に迫る。
次のコマには小屋の外観しか描かれておらず、読者には中で何が起きているのか見えないが、
「何をするんですか!?やめてください!!あっ!!ああっ………」
という華帆の台詞により、とにかく彼女の身がただならぬことをされてしまったのは伝わったのであった。
えっ…!?(※これは児童向け学習漫画です)
そして次のページには、洗脳されて(劇中では「催眠術」とされている)すっかり虚ろな表情になってしまった華帆が。
ええっ…!?(※児童向け学習漫画です)
その頃、運慶に話を信じてもらえない航は、例の写真を見せるも、壊されている像は偽物だと断言される。それを聞いたコナンくんは…
「その写真の金剛力士像は…もしかしたらホンモノだけどホンモノじゃないのかもしれないよ!!」
「航お兄さん!よく聞いて!!金剛力士像がこわされてもこわされない方法を説明するよ!!」
さあ、コナンくんがたどりついた真実とはなんなのだろうか…!?というのも読んでからのお楽しみとしておいて…
クライマックスで、航たちの活躍により、ついに悪だくみを暴かれた悪人たち。逆上し、袖に隠していた刀を一瞬で出し、折りたたまれていた刃を広げて運慶・快慶に襲いかかる。鎌倉時代の技術すげえ。ピンチに現れたのは…
「お前は…!!あのときの!?」
そう、妙に人間臭い表情とサムズアップのタヌキ!!ボールと間違えて野党に投げつけた、あのタヌキが駆けつけてくれたのだ!!ってちょっと待て!!ちょっと待てオイ!!なんでタヌキまで17年の時を超えてるんだよ!!いや、あれから17年後も生きていただけなのか!?タヌキってそんなに寿命長かったっけ!!
「そうか!!よぉし!!カモン!!」
こちらのツッコミなどつゆ知らず、即座にタヌキとの連携技を繰り出す航(そうか!!がめっちゃ超速理解って感じで笑う)。悪人たちをバッチリ倒し、タヌキと一緒にバッチリサムズアップを決めたのだった。
結局なんだったんだこのサムズアップタヌキ……。扱いがだいたい博士の発明品と同じだったよ…
この漫画の中で、運慶と快慶は全く正反対の性格で、普段はケンカばかりの二人として描かれている。異なる考えを持ち、時に激しく対立しながらも、彫刻への情熱は同じで、誰よりも互いを理解している二人。まさに副題の通り、「背中合わせの両雄」なのだ。
国宝とそれを造った彼らに関わったことで、水と油コンビであった航と華帆も、最後には解り合う。タヌキやタヌキへのツッコミばかり書いてしまったが、これこそまさに、国宝の歴史を学ぶための物語の在り方かもしれない。
……え、華帆は洗脳されてたんじゃないのかって?それはどうなったのかって?うん、よし!キミの目で確かめてみよう!!や、イジワルじゃないんですよ?ここにストーリーを全部書いたら売上を下げてしまう可能性というのがですね…
などとまとめに入ってしまったが、ラストの安室さんの出番についても触れておこう。
解決後、ポアロで事件を振り返っていた少年探偵団たち。安室さんは、序盤でプレミアものと鑑定したフィギュアを店に飾ればいいという元太の申し出を遠慮していた(※このくだり、同じコマにいるわけではないが、安室さんのいるポアロに哀ちゃんが普通に来店している)。
「ボクが言ったのは他人が決めた価値にすぎないよ…キミの思い出がこのフィギュアを宝物にしてるんじゃないのかい?」
この言葉は、華帆が国宝の価値とは何かを自分で考え、お気に入りの服が汚れたのも「大切な思い出のひとつ」と受け入れたことに通じるものがあり、『国宝編』の締めに相応しいと言える。
一方で、景光(スコッチ)をはじめとする警察学校時代の仲間たちや、宮野家との思い出を想起せずにはいられないのが、安室透の(降谷零の?)オタクのサガだ。最後に、自分の背後に控える謎のツボを意味深に見つめる安室さん。もしかしたらこのツボが、彼らとの思い出の品なのかもしれないね……いやそんなわけがあるか。
果たしてこのツボは何なのか?マスターか梓さんが買わされてしまったツボなのか。それもないと思う。
などと、気になる謎を残して終わった『国宝編』。
現在は続編であるシーズンⅡが発売中だが、そちらにも安室さんは登場しているらしく、特に第6巻を試し読みしたところ、目次には「コナンvs乱歩vs安室!?」とあまりにも気になりすぎる章題が!!
その上、少年探偵団の秘密基地に安室さんもいて、一緒に過去の時代へ飛んだタイムドリフターの様子を見ている!?
おいおいっ…!記事の最初では「いいと思う!!」とか書いたけど、それはそれとして突っ込みたいことはあるぞ!
だって、安室さんが「過去へ行けるガジェット」と直接関わったりしたら、我々は彼が失ってきた大切な人たちとの思い出に、切なくならざるを得ないだろう!?
あの時ああしていれば救えたかも!!それが叶っちゃうんだ、原作とアニメには何があっても絶対に出ないであろうタイムマシンがあれば……!
まあ…もっとも、この国宝編で「同じ人間が二人以上、同じ時代に存在することはできない」と明言されているので、自分の生きている時代での過去改変は無理なのだろうと思われる。
景光が自害する寸前にタイムドリフトすれば、赤井さんへの誤解も解けるのだが……。
コナンが体を小さくされるのを阻止しようとしたり、哀ちゃんが明美お姉ちゃんの死を覆そうとしないのも、それが理由なのだろう……たぶん。きっと。おそらく。
などと「コナンの世界にタイムマシンがあって大丈夫なのか?」について、今更ながら真面目に考えてしまった。
ちょっと脱線してしまったが、やはりこの日本史探偵シリーズは私の心をガッツリつかんでくるから困る。困らないが。また、集める時が来てしまったのかもしれない……。
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