2月5日、金曜ロードショーで放送された劇場版『名探偵コナン』の第1作・『時計じかけの摩天楼』。子供の頃から何度も見ていて、犯人もオチも知っているのに、つい最後まで見てしまった。
プロデューサーさんのnoteによれば、次があるかどうかなんてわからなかったので、青山剛昌先生とともにやりたいことをつめこんだ作品になっているという。どおりで、ミステリー・アクション・恋愛の三本柱のそろった劇場版コナンの魅力が、この時点ですでに完成されているわけだ。多くのレギュラーキャラに出番が与えられているのも良い。
映画館まで見に行ったのは、実は22作目『ゼロの執行人』が初めてなのだが、幼い頃から劇場版コナンはよく見る機会があった。金曜ロードショーだけではなく、小学校の遠足のバスで流される映画の定番だったのだ。
『時計じかけ』を見たのもバスの中が初めてだったかもしれない。『世紀末の魔術師』でコナンが蘭に正体を明かす覚悟をしたまさにその時、キッドが新一に変装して現れた時の驚き。『天国へのカウントダウン』でのジンとウォッカの暗躍にハラハラし、『ベイカー街の亡霊』のバーチャルゲームの世界にドキドキ。そして、『迷宮の十字路』で本物の新一が登場した時のテンションの高揚はよく覚えている。
そういうわけで歴代劇場版の中でも特にファンに支持されている、こだま監督による初期作品は、私にとっても思い出の映画なのだ……しかし、『14番目の標的』だけは見る機会がなかった。本当になぜなのかわからない。わからないが、『世紀末』が2作目だとずっと思いこんでいたのはまずそのせいだろう。
近年見たらすごくよかった 毛利夫婦と新(コ)蘭が好きならぜひ見てほしい
しかし中学生以降、クソイキリ中二病と化した自分は「ファミリー層の支持が厚い長寿アニメ」をナメくさるようになり、代わりに深夜アニメや放送時間は夕方でも内容が暗かったり重かったりする1〜2クールのアニメにばかり傾倒していく。コナンだって重いところは重いのだが…
バスで見る機会が失われたのもあり、自分は劇場版コナンに触れなくなっていった。テレビシリーズは一応見続けていたはずだが、キール編のあたりから組織絡みの重要回でも真面目には見なくなっていた気がする。
というかよりによってあの「赤と黒のクラッシュ」の終盤を見逃したようで、これにより赤井さんの一時退場から緋色シリーズまで、全然ついていけなくなってしまう。致命的にもほどがある。バーボン候補の三人の正体は・目的はなんなのか?赤井さんは本当に生きているのか?と考察するのが面白い時期に、「そういえば本堂瑛祐くんってなんでいなくなったの……?」などと周回遅れのことを思っていた(CIAに入るために海外に行ったんだよ!)。
たまに金曜ロードショーで前年の劇場版を見ることもあったが、流し見ばかりでやっぱり内容が頭に入っていなかった。その時はあまり面白く感じなくても、後年ちゃんと見たら面白かったので、作品を見る上で「ある程度は集中する」って大事なんだろうな。
そんな私が大学を卒業して間もなく、それは突如ネットで巻き起こった。『純黒の悪夢』大フィーバーである。
キュラソーがかっこよすぎ
私は完全に置いてけぼり。子供の頃から知ってるコナンの話題なのに、乱舞するのは「赤井」「安室」とあまり聞き覚えのないキャラ名。赤井と安室……いや知ってるけどどういうキャラなんだっけ……?おかしいぞ……まるで私は、『忍たま乱太郎』は昔から知ってるけど六年生のことは誰なのかさっぱりわからない人じゃないか……。
などと混乱するばかりで結局ブームには乗れないまま一年が経つと、今度の『から紅の恋歌』は久々に平次と和葉の恋愛がメインだという。組織との戦いもアクションもいいが、やはりコナンの王道といえばミステリーとラブコメ。『十字路』好きだったし、これはついていけそうだぞ。
紅葉も好き
2017年は、それまで年1〜2回しか映画館に行かなかった私が初めて「気になる映画があれば観に行こう」という心境になった年だったが、その頃にはもう夏だったので、レンタルで見たけど面白かった。和葉ちゃん可愛いしクライマックスの平次がイケメンすぎる……。
このあたりから「やっぱり劇コナっていいな…」という心が醸成され始めた。
ノベライズ表紙が異常な可愛さを誇る
「こうなったら来年の劇場版は初めて映画館で観てやろう」と私は思った。そのせいでコナン沼にはまりこむことになるとは、まだ思いも寄らないことだった……。
コナンファンとしての自分を決定的に変えた一作
『ゼロの執行人』で見事安室の女と化した私は、どうしてもテレビシリーズでの登場回が見たくてHuluに加入。
会員費はアマプラの倍だが、日テレ系列の作品が充実
安室さんの出番を追いまくり、かつ登場前の組織絡みのエピソードも履修したことで、これまで把握できていなかった話もちゃんと整理することができた。ありがとう安室さん……。
Huluでは期間限定で歴代劇場版も配信されており、せっかくなので全作網羅に挑戦してみた。これが面白い!初めて見る作品も、改めて見る作品も、ドキドキしながら楽しめる。こうして、イキリ中二病時代に取りこぼしたものはほぼ全てHuluで取り戻させてもらった。
初見のうちで特に好きになったのはサッカーが題材の『11人目のストライカー』で、「ゲスト出演した実在のサッカー選手さんの演技の拙さ」や「試合中に特定のプレーをすれば爆弾が解除される荒唐無稽さ」の印象が先行するが、実際見てみるといい意味で裏切られた。
比護選手に櫻井孝宏さんの声がついた作品。真田選手もすこ
思うに本作の主題はサッカーをめぐる絶望と希望、サッカーを通した年齢も立場も超える人間同士のつながりであり、そしてそのつながりは犯人との間にも生まれ得たことを示したラストシーンに帰結する。自分にとっては、真っ当な注目の浴び方にも十分値する作品だった……ただし、『ストライカー』の特に好きなところは犯人絡みなので、詳細は書けない。いつかこれ一本でネタバレをふくむ感想を書きたいので、それまでにとっておこう。
しかし、歴代で一番好きなのはやはり『瞳の中の暗殺者』。
黒タイツのインパクトが抜群
昨年、金曜ロードショーで近年放送していなかった劇場版を対象に人気投票が行われた際、1位を獲得し放送された。無論とても嬉しいのだが、「まあ、そんなに人気なら私よりもっと説明するの上手い人がたくさんプレゼンしてくれてるだろうから、わざわざ紹介しなくても」という気持ちになってくるのが自分の面倒なとこ!
ともかく、蘭が記憶喪失になってしまう衝撃の展開と、彼女を守るコナンのけなげさとかっこよさが魅力。ミステリー・サスペンスと恋愛との融合のさせ方が最も素晴らしい一本だ。そんなシリアスの中、「蘭姉ちゃんを守り隊」を結成する少年探偵団になごむ。
などとすっかり劇コナをエンジョイした翌年も、『紺青の拳』が上映中の映画館へ。そちらももちろん楽しんだ!
コナン、密輸入されるの巻
海外を舞台に、京極さんと園子の恋愛を劇場版では初めてメインに据えた本作。一本の映画としては『執行人』の方が好みだが、コナンの劇場版としてはこの『拳』の方が好みだ。本編の時点で「一人だけバトル物のキャラ」と言われていた京極さんを映画で活躍させたら、本当に彼の戦うとこだけバトル物と化すことがわかった。いいぞ。
さらに終了後、次回作の予告に声が流れたのはあの赤井さんだった。24作『緋色の弾丸』のメインキャラクターは赤井ファミリー。久々の劇場版登場となる赤井と世良、初登場の秀吉とメアリー。FBIも再登場し、秀吉と恋人の由美にも注目だという。
本編では、過去のエピソードでしか集合しないこの一家……いったい何が起きるのだろう?『異次元の狙撃手』が原作に先駆けて沖矢昴=赤井秀一と明かしたように、今回も驚きのしかけがあるのでは?と予想する声も飛び出す。
とにかく楽しみだった。2020年の春が待ち遠しくて仕方なかった。
毎年、『名探偵コナン』の劇場版最新作を見ることができる。
23年にも渡って存在していた「当たり前のこと」、それがどんなに幸福であったか。青山先生とキャスト・スタッフの人達の、どれだけの努力の上に成り立ってきたものだったのか。それを考えてもいなかったと実感した一年。
昨年を思い返すと、そんな苦い気持ちにばかり浸ってしまう。だが、そんな状況でも過去作を無料配信してくれたことには頭が下がる。あの取り組みに、誰かが救われていたらいいなあと願わずにはいられない。
厳しい状況は続くが、それでも私はわくわくして「再装填」を待ち続ける。『劇場版コナン』に、また魅了されるのを待っている。
『ルパン三世』とのコラボも いいぞ。