わくわく公式派生作オタク

「原作では見られないオリジナルストーリー!」にわくわくが止まらない異端のオタク

あの日私達は中学の演奏会で誰かの推しを汚したのかもしれないという懺悔

 急に思い出したのだけれど、中学時代に自分のいた吹奏楽部の定期演奏会では、曲の合間に寸劇があった。

 毎回、オリジナルキャラだけでなく当時人気だったドラマのキャラを、部員が演じるショートストーリーだった。曲目にドラマ主題歌が多かったので、その関係だろうか?

 

 しかし、当時の私、仮面ライダースーパー戦隊以外のテレビドラマを全然見ていなかった。だから知らないキャラの役を割り当てられても、困った。

 だが、「別に知らなくてもいい、シナリオ通りにやればいいだけなんだから」と言われた。たぶん、他にも自分の演じるキャラの出てくる作品を、見たことのない部員はいたと思う。誰も気にしていなかった。私も「そういうものか」と受け入れた。

 

 私の演じたキャラの登場するドラマは、もうタイトルすら思い出せない。あらすじが、成人男性が訳あって高校に編入するという話だったのは思い出せたのだが。

 で、私の役は、「絶対に笑わないため、『鉄仮面』と呼ばれている担任教師」だった。

 「さあ、授業を始めるわよ」と出てきた矢先に、生徒に「もう今日の授業終わりましたよ~」と指摘され、「ええっ!?そ、そうだったわね(汗)」とそそくさと去っていくだけの役…厳格そうな設定のわりにアホな教師である(※寸劇の中では)。

 

 

 前置きが長くてすまんが、ここからが本題。

 

 あの年は「恋愛」をテーマにシナリオが書かれた。

 同じ学校の後輩女子と先輩男子のラブストーリー…まあその内容は正直中学時代の自分から見てもお粗末であったが、ごく短いし、別にクオリティが要求されるものでもあるまい。ただ、その主役二人がオリジナルキャラという点からも、「これは今までのとはちょっと違うんだな」と感じた。

 

 ……問題は、この手の話にはよくある「当て馬」ポジションであった。

 それはなんと、当時女児を中心に人気があった、アイドルアニメの主人公だったのだ。

 

 えっなんで…?と読んでくださっている方は思ったかもしれない。私にもわからなかった。そして今もわからない。

 

 しかも、彼女は「(この寸劇の)ヒロインの友達として登場しておきながら、彼女をライバル視しており、ライブステージで大勢の前で『〇〇先輩は私が好きなんだから!!』と宣言。ヒロインがショックを受けて逃げ去ると、『勝ったわ!みんなあたしのこと応援してね~♡』などとほざいて出番を終える、イジワルな子」となっていた。誰も応援しねえよ。

 

 だが、後半でヒロインが先輩とふたりっきりで話すと、アイドルは勘違いしていただけだったと判明。

 「オレが好きなのはヒロイン、お前なんだ…」「せ、先輩…♡」HAPPY END…

 というわけなのだが、公衆の面前で勘違い宣言をしてしまったアイドルちゃん、お前……。一体どういう経緯で勘違いしたのかも不明だし、ピエロというか、完全にただの「イタい子」じゃないか……。

 

 もちろん、重要なことはもっと他にある。そもそも、このアイドルアニメの主人公は、本当にこんな性格なのだろうか?

 私は未だに観ていないのだけれど、当時CMや絵では見る機会のあった彼女は「元気で明るい子」という印象で、とても寸劇のシナリオのようには見えなかった。

 

 

 シナリオ担当の子を含めた、他の部員の前で言った気がする。自分なりにあくまで冗談らしい聞き方にしようと笑いながら、「この子の扱い、本当にこれで大丈夫かな~」と。

 返答は、やはり笑いながら「書いた私がこのアニメのファンだから」だった。

 「誰も気にしないって~」というようなことを言われた。内心、(そんなわけないだろ)と思った。あの頃、アニメファンではなく女児に対してではあったが、本当に人気が高かったのだ。

 しかし、シナリオ担当者とは友人ではあったが、こんなことで部に波風を立てるような気にはなれなかった。

 それに私が全く見たことがないのに対し、彼女はちゃんと見ていると言った。今思えば実際どうかなんてわからないが、信じたのだ。

 (あ、もう何言っても無駄だ)とも考えたかも。アイドルちゃんを演じる子も、あのテンプレ悪女ぶりにノリノリだった。

 

 そして、寸劇は何も変わらず上演された。

 

 我々の吹奏楽部は有名でもなんでもなかった。夏のコンクールでは三年間で一回しか地区予選を突破できず、その一回も銅賞で県大会を終えた。だから演奏会といっても、地元のホールを借りたが大した規模ではない。

 

 みんな、中学時代に吹奏楽部にいたことは覚えていても、こんな細かいことは忘れただろう。私も今日までこんなことを忘れて、家と会社を往復していた。来客の人たちなんて、もっと記憶に残っていないはずだ。

 

 本当にそうだろうか?

 

 あの場にあのアニメに夢中になっていた誰かがいなかったと、地球上の誰が否定できるんだろうか。

 肯定だってできない。でも否定も不可能。

 「子供だった」という言い訳は、果たしてその相手に通用するのだろうか?

 

 しかしそんなことはたやすく忘れて、私は自分の好きなものを馬鹿にされてイラつくことにいそしんでいる。