わくわく公式派生作オタク

「原作では見られないオリジナルストーリー!」にわくわくが止まらない異端のオタク

コミカライズ主人公は「いきなり消えても誰も惜しまない存在」なんかじゃない。

 何かと厳しい意見に晒されがちな公式派生作を、自分は好きだと書くためにこのブログを始めた。

 それはそれとして、私も全ての公式派生作に100%肯定的なわけではない。いつかは厳しい意見をブログに書く日が来るだろうとは思っていた。

 

 だが、それがここで三度感想記事を書き上げた某魔法学園スマホゲーのコミカライズになるとは、私は「考えたくなかった」のではなく、そもそも考えていなかった。

(ただ、私は新しい主人公自体と、公式メディアミックスの主人公が女性であることは好意的に受け止めており、それらを批判する意図は一切無いと明記しておく)

 

 事前に告知のされなかった主人公世界線の交代劇、それによりゲームに沿うストーリー進行とキャラとの関係性の変化の描き方はどうなったか、今後どうなっていくのが予想されるか。

 「わくわく公式派生作オタク」ならば否定的でない反応をするはずだと思っている方は、恒例の※ネタバレ注意より先を読まない方が良い。期待を裏切ってしまうだろう。

 もしも今、すがるような気持ちでこのブログを見ている方がいるのなら、非常に申し訳ない。それしか言葉を出せない。

 もちろん、私と違う見方をしている誰かを否定する気はないので、私の文章でご気分を害されたのならこんなもんバフンウニの鳴き声だと思い読まなかったことにして、ご自分の考えを尊重してほしい。

 

※今回の記事には一章の単行本最終4巻と、本誌2023年1月号に収録された内容のネタバレが含まれています。

 

 

あ…ありのまま12月16日に起こったことを話すぜ!

『私は漫画版の続きを読むために本誌を買ったら、主人公の雄剣は存在ごと消えて無くなっており、悠河という生まれて初めて見たキャラが一章までの事件に関わった主人公になっていた』

な…何を言っているかわからねーと思うが私も自分が何を読んだのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…

乱丁だとか別の漫画と間違えただとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 

 読んでない人にスクショ1枚分で説明を求められたら、自分にはこうとしか書けない。ポルナレフ構文、げに偉大なり。

 

 この交代劇についていけない理由の一つに、事前の告知が無かったことが挙げられる。

 第二章の連載開始自体は、第一章の最終回掲載時に告知されていた。だが、そこには「次章から主人公が交代!」とか、「新しい主人公が登場!」といった情報がどこにも書いていなかったのだ。

 

 二章予告のあらすじには「学園生活にも慣れてきた『ユウ』」と書かれている(単行本最終巻の巻末でも同様)。

 『ユウ』はゲーム版主人公のデフォルトネームであり、コミカライズでも雄剣と悠河の両方が他のキャラからそう呼ばれている。

 一章コミカライズのあらすじでの雄剣の表記は、本誌における紹介ページでは『円満』だったものの、単行本の裏表紙では『ユウ』だった。本誌もアオリ文では『ユウ』と書いている。

 私は二章の予告でも「このあらすじの『ユウ』=雄剣」と思って読んでしまったが、特におかしな反応ではないはずだ。

 

 逆に、これを読んで

「そうか、わかったぞ!『ユウ』っていうのは雄剣じゃなく新主人公で、『ユウの慣れてきた学園生活』っていうのもこれまでのコミカライズで描かれてきたものじゃなく、新主人公が入学した我々の知らないパラレルワールドでの生活なんだ!」

と気づいた読者が何割いたのか、実に真剣に知りたい。

 小さくなった名探偵レベルの頭脳に向けたあらすじだったのだろうか?私には推理できなかったょ…。

 

 また、一章最終回のラストはゲーム通り一章寮長を闇堕ちから救い、彼らが少しでも良い方向に変化したハッピーエンドではあった。

 しかし、雄剣が元の世界に帰る方法は見つかっておらず、目的を果たせずに学園に残ったまま終わっている(単行本最終巻にも、彼が帰還する書き下ろしエピソードなどは特に無い)。

 なので、「雄剣の物語」が何の後腐れもなくちゃんと完結したとは、当時も今も感じていない。

 

 今思えば、二章の布石となる「二章寮のキャラが計画を話しているシーン」がカットされたことが、「雄剣が入学した世界線での二章は描かれない」と示していたのかもしれない。

 だがそれは「今思えば」が大前提で、最終回掲載当時は「単にページ数の都合で入れられなかったのだろう」「コミカライズは明るい雰囲気で一章の物語を終えたかったのだろう」と、主人公交代とはつながらない受け止め方をした読者は、私の他にもいたのではないだろうか…?

(それに、主人公が尻尾を踏んでしまったことから二章寮キャラと顔を合わせる、いかにも「次の章ではこのキャラ達と関わりますよ」なシーンは、雄剣でしっかり再現されている。2巻収録。

しかし、コミカライズ二章では悠河が尻尾を踏んだのが冒頭で描かれたこともあり、今や二章寮長のワイルドセクシーさと二章2年生のオカンっぷりを見せる以外に何の意味があったのかよくわからないシーンに…)

 

 こうして、二章も引き続き雄剣が主人公だと思ったまま本誌を購入した私は、悠河の登場シーンまで読み進めてポルナレフと化した。

 二章連載の告知を見た時は「これからも読めるのか!」と大いに安堵したが、実際のところ「雄剣が主人公の漫画版」は一章で打ち切りも同然だったと、この時初めてわかったのだ。

 

 私が冷静さを失い、偏った見方からこの文章を書いているのは大いに認める。だが、嘘はついていない。本当だ。信じてほしい。

 確かに、一章連載中から章ごとの主人公交代を予想していた人だっていたが、だからといって「事前に交代を告知しなくてもいい」とはならないのでは……。

 今の自分には、続編やスピンオフで主人公が交代するのを事前に発表する他作品がすごく親切に思える。3〜4ヶ月も前からサトシ卒業を発表したアニポケへのイメージはもはや菩薩だ。

(一応、私がいつもチェックしているエンタメ系情報サイトに「次の主人公は柔道女子!」といった見出しの記事は出たのだが、それは発売当日の午後だったので、朝起きて即電子版を購入した私には意味がありませんでしたとさ…)

 

 なお、一章の後に雄剣がどうなったのか非常に気になるところだが、現時点で全く触れられていない。

 何せ、二章の舞台は「雄剣というキャラが最初から登場しなかった世界」であり、作中の誰も雄剣を知らず、彼が存在した痕跡すら見つけられないのだから。

 そのため、コミカライズ一章はハッピーに終わったにも関わらず、一部のファンの間では「あの後、雄剣は闇堕ちした二章寮長を止められなかった」「二章で死んだ」→「時間が巻き戻され、二章寮長を止められる悠河に選び直された」という説が流れるようになった。

 考察・解釈はその人の自由なんだけど、本当にそうだったら彼のファンとして辛すぎるし、あのラストを素直に祝福できなくなるのは私個人は嫌だな…と思う。それに、雄剣が主人公として悠河に劣っていたみたいで落ち込む。

 

 

 交代劇についていけない理由、二つ目。それは主人公だけでなく、世界線も一章までとは違うことだ。

 前述の通り、二章を読んでいた私は新主人公・悠河の登場シーンで困惑する。そんな彼女の紹介として、雄剣同様に元の世界でのバックボーンが描かれる。

 ここまではまあいいとしても、「色々あってマスコットと相棒になった」「クラスメートの二人と、ある事件を一緒に解決し仲間になった」…と、メインキャラとの関係構築が既に済まされたものとしてあっさり語られてしまう。

 

 正直に書くと、私はこれまで雄剣と関係を築いてきたはずの彼らの中で、雄剣の存在が初めて見た人物に取って代わられたようで、しかもそれに違和感を抱くのは読者しかおらず、「少し怖い」とすら感じてしまった。

 洗脳?記憶改竄?いや、悠河はそんなことをして誰かの友人を奪う人間では絶対にないと、1話を読めば確信できる。

 できるがしかし、「金魂篇」「クラスメート達が退学を免れたのも…闇堕ちした一章寮長を止められたのも…全部比良坂さんのおかげじゃないか!」といった言葉が頭に浮かんでしまう…。

 

 まあ、あくまで一章と二章とで別の人物が召喚されたパラレルワールドを描いているだけであって、雄剣は彼の世界線でみんなと仲良く?やっているのだろうとも思える。

 思えるがしかし、作中でも外でも読者に向けてなんの説明もない。

 

 そして、今までこのブログで原作と異なるメディアミックスを擁護してきたことへのダブスタになってしまうが、主人公&世界線交代により私のメインストーリーの好きな点が大きく損なわれる可能性が出てきた。

 好きな点とは、「前章で敵対したキャラが今章では心強い協力者になる」まさに王道の燃える展開や、「前章で悲しい過去が語られ闇堕ちしたキャラが、今章では成長した姿を見せる」前章が辛かったからこそ感動する描写だ。

 説明するまでもないだろうが、ゲームでは章ごとに主人公が別人にならないし、パラレルワールドにもならない。

 

 つまり、コミカライズで一章寮長が協力してくれるのは激しい戦いの果てに和解した雄剣ではなく、読者視点では今章で初めて顔を合わせる悠河なのだ。

 また、彼が相変わらず厳格なものの以前より丸くなっていたり、二章寮長に「ボクも人のことを言えた義理ではないけど、今のキミは見るに堪えない」と言葉をかけるのも、前章で母子関係を発端とした彼の苦悩と暴走の深い掘り下げがなされたから響く描写だった。

 だが、悠河の世界線における彼の厳格さと闇堕ちについては、たった2ページの回想で済まされている。

 母親や副寮長との過去に全く触れられておらず(というか副寮長ともう一人の3年生の名前すら出ない)、彼が寮生に恐れられるほどルール違反に厳しくしていた理由も書かれていない。

 「こちらの世界線で以前起きたことは、ゲームや雄剣の世界線と変わりませんから、後は脳内補完してくださいね」と、そういうことなのだろうか?

 

 もっとも、このへんはマジでつっこみ過ぎるとダブスタになるのと、まだコミカライズがその場面まで描かれていない=読んでみるとそんなに悪くない可能性が捨てきれない(特に一章寮長の背景は、2話以降にまた語り直されるかもしれない)ので、これ以上は書かないでおく。

 まあ、1話の時点で、我々読者は植物園で会った場面など見てない悠河と二章寮2年生が、互いに(どこかで会ったような?)と思っているところに混乱しつつはあるが…。

 

 

 …この記事のタイトルにせよここまでの本文にせよ、雄剣の突然の降板を嘆いているわけだが、今回の不自然な交代劇のシワ寄せを一番食らったのは、むしろ悠河の方かもしれない。

 悠河自体は魅力的なキャラクターだ。美しき男装の麗人・イケメン女子といった風貌で、雄剣に負けず劣らず武闘派な面と、捨て猫を気にかける優しさを持ち合わせている。

 しかし、雄剣とノベライズ主人公の優也に比べ、私はどこか「浅さ」を感じてしまう。

 

 悠河が主人公になってまだ1話目なのだから当然とも言えるが、やはり一章までの出来事が「ゲームや雄剣の物語と同じことが起きただけなので、深くは描かない」扱いなのが、大きく関係しているのではないだろうか。

 

 振り返ってみれば、雄剣と優也のキャラクター性の掘り下げは、周囲の原作キャラとの関係構築と密接に関係していた。

 雄剣は元の世界の後輩と重ねることで相棒やクラスメートを理解し、励まし導いた。

 優也は極端に人付き合いを避けていたが、相棒とクラスメートとの関わりを通して成長していった。

 闇堕ちした一章寮長と対峙した時は、原作キャラ達と同様にそれぞれ信念を貫き通した。私はこの作品のメディアミックスオリジナル主人公の、そういうところにすごく好感を抱いたのだ。

 

 そして、こちらは媒体が違うため当初から主人公が異なるのを予想していたのもあるが、雄剣より後に登場した優也が主人公のノベライズを、もう一つのパラレルワールドとして私がすんなり受け入れられたのは、彼の物語が最初から一章の最後までしっかりと紡がれていたからだ。

 

 対して、同じ話をくり返すようだが、悠河の相棒・クラスメートとの関係構築は「色々あって」「ある事件を一緒に解決して」の一言だけ。

 一章寮長2ページ回想でも、彼の闇堕ちを前にして悠河が何を思い、どういう行動に出たのかは描かれていない(ゲーム同様、少なくとも戦いの場に残ってはいたと解釈するのが妥当だろうが)。一般男子の面打ちに続き一般女子に背負い投げされる推しが見たかったが??

 その「浅さ」が、前述した「雄剣の存在が悠河に取って代わられたような印象」と合わせ、これまで私がコミカライズで見てきたこと・雄剣のやってきたことはなんだったのか?と釈然としない気持ちに繋がってしまっている。

(もちろん、個性の薄い主人公を求める層もいるのは理解しているが、柔道女子設定からして悠河がその需要を満たすために創られているとはあまり思えないので…)

 

 さらに言えば、連載が進み「最初は驚いたけど、今では悠河がコミカライズ二章の主人公で良かったよね」と思えるようになったらそりゃ嬉しいが、なったところで三章が始まったら、今度は悠河が存在ごと消えて知らないキャラが二章での出来事を経験した主人公になっているかもしれない。

 応援していた旧主人公が消えてしまう辛さと釈然としない気持ちは、今後も章ごとにくり返される可能性があるのだ。

 確かに自分は、次はどんな公式メディアミックス主人公を見せてもらえるのかとわくわくしてはいた。

 が、「新主人公を出すためなら、既存の主人公を何のフォローもなくいきなり消してもOK」とは考えてすらいなかったのである。

 

 そもそも、悠河はアニメなど他のメディアミックスの主人公に回すことで、彼女が学園に来てからの出来事を深く描き、コミカライズは雄剣がずっと続投していれば、ここまで書いてきた問題はどれも回避できていた気がしてならない。

 そうなっていたら、少なくとも私を含めた「主人公交代が不満なのであって、公式メディアミックスの主人公が男子校で唯一の女子なのは別に気にしてない」層は、もっと快く悠河の登場を受け入れられたはずではないだろうか。

 

 

 一方で、他の読者の間では「奇数章が雄剣・偶数章が悠河でローテーションするのではないか」と予想されてもいる。

 それでも個人的には、「たとえ雄剣でも、悠河のしたことを取ったような描き方になるのはどうなのか」「前章と今章とで世界線が違うことによる違和感は変わらない」というモヤモヤは残るが、また雄剣に会えるし、彼も悠河も使い捨てられる主人公ではないのなら、半分くらいは気持ちが楽になる。

 しかし、これもファンの憶測でしかなく、公式からはそうだともそうでないとも言われていない。期待したところで、三章が始まった時また新しい主人公が出ていたら、ますます落ち込みそうだと悲観してしまう。

 

 コミカライズを追うのをやめるわけではない。

 悠河自体は好きだし、作者の方も交代しているが(これはちゃんと事前に書いてあった)こちらもキャラクターはみんな美しく、ゲームでは見られない所作まで細かく描かれている。

 この先、好きなシーンが漫画ならではの表現で描かれたり、ゲームに立ち絵がなかったキャラの幼少期の姿がまた見られたりするかもしれない。こういった期待は三章以降にもある。

 

 だが、我々雄剣のファンに応えてくれるかどうかに関しては、「期待したい」気持ちよりも、「期待できない」気持ちの方が大きくなっている。そんな自分に気づいて、自分でショックを受けた。

 例によって自分語りですまないが、私はこれまで「期待できない」声の方が大きい作品に、それでも期待を寄せる側のはずだった。

 人気漫画の実写版、アニメオリジナルストーリー、綺麗に完結した作品の続編、令和に入ってから大人の評価が芳しくない変身ヒーローシリーズ……どれも「期待したい」側なのだ、私は。

 

 だが何より一番ショックなのは、雄剣が事前に情報を一切出さないまま漫画から消えてしまったら読者がどう感じるのか、まるで想定されていなかったように感じたことだ(本当にされなかったのかはわからないが)。

 私にとって、このコミカライズは「しょせんゲームの宣伝のためのメディアミックス」ではなかったし、雄剣は「ただのゲーム版主人公の代わり」ではなかった。

 一本の漫画として、一人のキャラクターとして、とても大切だった。

 雄剣が曖昧にされていた主人公像の絶対的な正解だとは、全く思わない。ただ、無限の可能性の一つとして、雄剣を含めた主人公達それぞれが、全て大切なのだ。

 

 著しく冷静さを欠いた憶測なのは大いに認めるが、もしかしたらこう思っていたのは読者だけだったのかもしれない。