円満雄剣に再会できない限り、私がツイステのコミカライズ版についてこのブログに書くのは、きっと今回が最後になるだろう。
雄剣が突然いなくなってから、一年半以上の間。
一章が連載していた頃の楽しい思い出や、ブログに書いた応援記事を思い出すたびに、ずっと考えている。「どうして私はこうなってしまったのか」と。
(「どうしてコミカライズ版ツイステがこうなったのか」とは、読者の私が考えたところで勝手な憶測で頭がいっぱいになるだけなので、あまり考えないようにしているのだ)
「わくわく公式派生作オタク」は、その名の通り私が公式派生作を好きだと書くために作ったブログだ。
そこでコミカライズ版への激しい批判を三度も書いていいのだろうか。それは過去の自分への、このブログを応援してくれた人々への裏切りではないか。
何度も何度も、何度も悩んできた。
しかし、私は「雄剣がずっと主人公を務めるコミカライズ」を応援するのが目的で、一章のレビューを書いてきたことに一つのけじめをつけたくて、この記事を書くと決めた。
だってここは、コミカライズ監督生の交代劇を肯定できるどこかの誰かではなく、私の書いてきたブログなのだから。
そして、今までコミカライズ監督生の交代に苦言を呈する時は「楽しんでる人は気にしないでほしい」と散々前置きをしてきたけど、もうやめる。バフンウニの戯言です、とかももう書かない。(バフンウニに失礼だしな)
もちろん、楽しんでる人を傷つけてやろうなんて思っているからではない。
この記事を私以外のために向けるとすれば、それは私と同じで突然雄剣を失って傷ついたまま、 以前のようにコミカライズを楽しめなくなった人のために向けたいのだ。
今回は、一章連載開始の少し前にゲームを始めた時からさかのぼって、私の読者としての心境の変化を語りたい。
その中には、雄剣の扱いと無関係な話も多数入れる。
「一章連載中の雄剣ファン同士での交流や布教について」
「雄剣のファンとしてだけでなく、リドル(最推し)のファンとして、二章と三章での彼の扱いが気になったこと」
「コミカライズ前から『うちのゲーム版の監督生』は女子のつもりでプレイしていたが、公式初の女子監督生である悠河の登場の形には、むしろ大きな疑問を抱いたこと」など…
さらには「ツイステに出会う以前からの、自分の好きな作品の公式や批判意見へのスタンス」、「雄剣降板の前に、ツイステには一切出演していない人の不祥事にショックを受けたこと」に至るまで。
この文章は「私にしか書けない、私個人のコミカライズ版ツイステをめぐる話」として書きたいからだ。
「いやお前の個人的な話なんか興味ねえ〜雄剣の話題しか読みたくね〜」と思った方には、同じ雄剣ファンの方が書かれた、こちらのブログ記事を是非おすすめする。↓
「ツイステコミカライズ三章から円満雄剣を完全に喪失し地獄に落ちたオタクのブログ」開始 | ツイステコミカライズ三章から円満雄剣(通称・伊勢海老くん)を完全に喪失し地獄に落ちたオタクのブログ
雄剣が二章で突然降板し、三章でも戻ってこなかったことによるファンのショックを相当な熱量で文章化してくださっており、私も今回の記事の参考にさせて頂いております。
*
2021年1月
ファンの動画と友達がきっかけで、私はツイステの原作ゲームをDLした。
だが当時はここまでハマるとは思わず、コミカライズが始まるまでの間は真面目にストーリーを進めていなかった。
主人公『監督生』の設定はDL前に調べた。「ビジュアル無し、性別も不明なのでファンによって解釈は違う」とネットで見た。
ゲームをプレイする時、私独自のイメージの中にいる『うちの監督生』は女の子だ。昔から性別が選べるRPG主人公は自分と同じ女性にしていたので、「解釈が自由ならば」と、舞台は男子校だが深く考えずそれにならっていた。
少なくともゲームをプレイする上では、私は「女子監督生派」に分類されるのだろう。
しかし『うちの監督生』は あくまで『うちの監督生』であり、 『他のプレイヤーの監督生』ではないし、『公式の監督生』とも100%同じではないと思っている。
2021年3月
月刊Gファンタジー(以下、GF)誌上でコミカライズ一章の連載が開始。円満雄剣が登場。
その頃、私はコミカライズ化と聞いても「ふーん」くらいだった。しかし、元々Twitter(現X)で交流のあった友達が「コミカライズの主人公くんがすごく好み」と書いていたので、私も公式サイトの第1話試し読みに触れた。
そして驚愕した。「なんだ!?この…オリジナル漫画の主人公でも十分通用しそうな濃いキャラクターは!!」と。
そんな雄剣に、私も心惹かれずにはいられなかった。
(思えば、この連載開始時に「コミカライズでは章ごとに監督生が代わり、雄剣の出番は一章で終わりです」とはっきり公式から告知があれば、私の印象は全く違っていたかもしれない。
告知があったところで「ゲーム版にある、章をまたいだキャラクターとの関係性構築はどうなるんだ?」問題は解決しないが、私は連載開始の少し前にゲームを始めたばかりで、メインストーリーもあまり進めず思い入れが薄かった。
この時点で知らされていれば、少なくとも私は「監督生が変わるのも、原作と違うメディアミックスの面白さとして受け入れよう」と考えられたかもしれない。
雄剣の出番が一章だけで終わってしまうのも、事前に覚悟の上だったらコミカライズとの付き合い方は変わっていただろうし、ここまでネガティブな印象にはならなかった…)
2021年4月〜2022年9月
コミカライズ版のファンとして過ごした時間は (雄剣の降板まで)本当の本当に楽しかった。
コミカライズがきっかけでツイステに本格にのめりこんだ私は、同じくコミカライズからゲームを始めた友達とGFの感想を語り合い、その話題の中心はやはり雄剣くんだった。
彼が大学時代からの親友の好みにも合いそうだったので布教してみた。狙い通りだった。親友はツイステをやっていなかったが、雄剣くんのおかげでコミカライズを追ってくれたし、トレイ先輩やデュースも好きになってくれた。
ファンとしての贔屓目かもしれないが、雄剣くんからツイステに入った人をネットで見る機会は、決して少なくなかった。円満雄剣は、新規ファン開拓を立派に果たしていたと感じる。
コミカライズをエンジョイしまくっていた頃の懸念は、打ち切りだった。
私は、他の好きな漫画は基本的に単行本か連載のどちらかしか追わない。だが、コミカライズ版ツイステには最新話をすぐ読みたい気持ちも単行本を手元に置きたい気持ちも持っていたし、応援のためにも両方買うと決めた。
単行本は発売したらできるだけすぐに買った。私はリアル書店派だけど、地方の北海道に住んでいるから、発売日当日に店で買えない。だから会社帰りに発売日もその翌日も書店をうろうろして、三日くらい経ってようやくお迎えしたのだ。
そして、とにかくコミカライズを、雄剣を布教したくて仕方がなかった。
かえって売上を阻害しないように「発売から一ヶ月後」と自分ルールを課しつつ、レビュー記事を夢中で執筆した。
その時一番好きなメディアミックスを、このブログで書けるのが嬉しかったのだ。
(…基本的に過去に書いた記事はあまり書き直さない主義なのでそのままにしているが、一章レビューの最後に「ファンタジー漫画としてゲーム未プレイの人にも勧めたい」と書いたのを、雄剣の降板後は後悔している。
あれを読んだ人がみんなコミ監交代を苦々しく思ってるとは限らないが、私は自分がどうしても納得できないものはあまり人に勧めたくないので…)
2巻と同時にノベライズの一章も発売。そちらの主人公・黒木優也は雄剣と真逆のキャラクターだったが、両作を通して「ツイステのメディアミックスは、独自の主人公の物語を大事にしてくださるのだな」と感じた(この時は)。
(今読むと「公式から我々は好きに監督生を出していくから、あんた達も好きに監督生を思い描いていいぜ!と言われているようで、実に嬉しいし楽しい」という感想が、雄剣降板以降もコミカライズを楽しんでる読者と違い「コミ監交代制は色々な監督生像が見られるから良い」と考えられない今の自分とはまるで正反対で、我ながら乾いた笑いすら出てくる。
しかし、先に紹介した他の方のブログの内容とも重なるのだけれど、私の中では「それぞれの監督生の物語が大事にされる」大前提があってこそだった。雄剣のそれまでの活躍が、他の誰かに奪われたかのように見えるやり方では成立しないのだ…)
さて、ここで一章の完結以降の話に入る前に、「ツイステに出会う以前からの、自分の好きな作品の公式や批判意見へのスタンス」を書いておこう。
基本的に私は好きな作品の批判が好きではなかった。他人が批判をするのは自由だと理解してはいるが、私の視界にだけその批判意見が絶対に入らないシステムができやしないかと思っていた。
公式関係者への批判も苦手だった。原作者はもちろんのこと、私にとってはメディアミックスの制作を担当する人達もまた、「私が辛い時に励ましてくれる、生き甲斐をくれる人達」に違いなかった。
Twitterで、ブログで、その気持ちが行き過ぎてしまっていた面もあると思う。
他人にそんな気持ちを向ける分、私もできるだけ誰かの目に入る場所に批判を書くわけにいかなかった。
…とはいってもやっぱり書く時は不満を書いていた。ただ、記憶の美化でなければ、あの頃創作物に抱いたマイナスな感情は、不満ではあっても怒りや不信感のあらわれとは違っていた気がする。
そして公式関係者に対しても、自分は楽しませてもらえる感謝を第一に持っていたかった。
それに、応援の言葉であっても公式にメッセージを送るのがはばかられた。「私なんて、公式から存在を認知される資格はない!」と考えずにはいられない。
要望などもってのほか。あの頃は、「作り手のやりたいようにやってもらうのが一番」と思っていた。
ただ、作品を問わずどうしても引っかかってしまうことがある。「公式から無かったことにされる」ことだ。
それだけはどうしても、生みの親から自分の好きなものを存在ごと否定されたと感じて、受け入れられない……。
他のファンから「◯◯なんてなかった」、「◯◯化なんてしてない」、「これ要らない」と言われるのも大嫌いだ。
22年8月、別作品の感想でメディアミックスのオリジナル要素について、「好きになれなくても存在を許したい」と書いた。嘘なんてなかった。あの頃の自分には。
2022年10月
コミカライズ版一章の連載が完結。同時に、12月から二章の連載が始まると告知される。
最終回は本当に素晴らしい内容だった。私はゲームキャラだとリドルが最推しだ。
実を言うと、序盤でリドルの出番を増やし雄剣との因縁を演出するアレンジにはわくわくすると同時に、彼のヒステリックな面の強調にハラハラしていた。
しかし、この最終回のラストでリドルと雄剣の和解が入ることにより「雄剣の物語におけるリドルの因縁にはちゃんと意味があり、それがしっかりと昇華されて一章が終わる」描写に私は感激した。
そして何よりも、この最終回と二章連載告知の内容から、次章で雄剣が新しい主人公に代わるとは全く読み取れず、「コミカライズは二章以降も雄剣が主人公のままなんだ!」と私は歓喜していた。
私と友達は「二章以降のあのシーンで、雄剣くんはどうすると思うか」「一章では接点のなかったキャラとどんな絡みをするか」としょっちゅう話していたし、ネットでもそういう声はよく見た。ファンアートに描いている人もいた。
きっと少なくない人が、雄剣は二章以降も主人公として活躍を続けると期待していただろう。
2022年10月下旬〜11月
世の中には「タイミングの悪さ」ってものがある。こればっかりは、コミカライズの製作陣を責められない。
私の人生が最も辛い時に救ってくれた、他作品のキャラクターの演者(※ツイステには現時点で出演していない)の不祥事が発覚した。
あの時点で、私はいきなり不幸のどん底に突き落とされた気がして、「もう生きるのが嫌になった」などネガティブな感情で頭がいっぱいだった。
そして、その件でモヤモヤすることがない現ジャンルなのもあって、心の比重はそれまで以上にツイステに傾いていった。
上記のショックにより、3巻のレビューは予定よりも遅れたが、それでも無関係なツイステのことを考えていれば救われた。
「本誌ではついに最終回を迎え、12月から二章が予定されている」と書いた。
私は本気で信じていた。私から何もメッセージ等を送らなくても、制作陣は雄剣の物語を望まれているとわかってくれているに決まっている、これまで通り最高のコミカライズを届けてくれるに違いないと。
事前に発表せず、いきなり主人公を交代するなんて有り得ないと。
「好きな作品をたくさん持っていれば、そのどれかに嫌なことが起きてもまだ他の作品がある」という話は、今となってはまやかしにしか思えないが、当時の私は信じていた。だから自分にこう言い聞かせた。
私にはツイステがあるのだから。二章でも引き続き雄剣が活躍するに違いない、大好きなコミカライズもあるのだから。
2022年12月
コミカライズ二章、連載開始。比良坂悠河が登場。
円満雄剣は登場しないばかりか、作中で彼の存在自体に一切言及されなくなった。
我々がこれまで見てきたはずの、「コミカライズ上でグリムと相棒になり、エース・デュースと仲間になり、ハーツラビュルでの事件に関わった監督生」は雄剣ではなくこの悠河だと、まるで前回までのあらすじのおさらいのような簡潔なダイジェストで語られた。
私は、自分が一体何を読んでいるのか理解できなかった。
そして思った、「私は騙されたのか?」
もしかしたら、連載告知で読み飛ばした記述があったのかもしれない。公式からの情報を見逃したのかもしれない。
しかし、何度連載告知のページを見直してみても。GFの公式サイト、GF・ゲーム版の原案等を担当しコミカライズにも監修に入っている枢やな先生・担当編集の熊剛さん・二章コミカライズ作者の小田すずか先生のTwitter公式アカウントを見ても(※一章作者の葉月わかな先生・コヲノスミレ先生はアカウントがない模様)。
連載告知から第1話掲載号発売までの間に、公式から「主人公が代わります」とは一言も発表されていなかった。
今振り返っても、何も理解できない。
さて、雄剣を突然失った傷から一旦離れるためにも(離れられるか?)、「元々ゲーム版を(自分の中では)女子主人公のイメージでプレイしていた私が、公式で初の女子主人公である悠河の登場の形にむしろ疑問を抱いたこと」について、書いてみる。
といっても「登場の形」に物申したいのであって、別に悠河自体に否定的な感情があるのでも、公式に女子主人公を出してほしくなかったわけでもない。
先に登場した雄剣と優也は、いずれも学園に来てからハーツラビュルの事件が解決するまでの、彼ら独自の物語がしっかりと描かれていた。
そんな二人の男子主人公に対して、「これまで人気を得てきた男子主人公の功績を、横からかっさらった」とも見える形で、女子主人公を初めて登場させるのはどうなんだ…?と首をかしげてしまう。
第1話だけで、制作陣が悠河を男子校で唯一の女子の主人公だからと、周囲から特別扱いさせる気が全く無いのは伝わった(4話目くらいまでは読んだが、その印象はぶれなかった)。
だからこそ、同じ高校生のエース&デュースと男女の壁を越えた友情を築くに至るまでを、簡単な台詞だけで済ませず描くべきでは…?グリムとの相棒関係も同様だ。
(後の三章の宥太の登場時もほぼ同じだったが、別に男子監ならOKというわけではない。
ただ、「公式で初」の登場の仕方がこれでいいのか。私はゲーム版を、自分の中じゃ女の子と設定していようが監督生とキャラ達との関係性を大事にしながらプレイしていたので、どうしても引っかかってしまった…)
女子監督生が公式に採用された喜びよりも、雄剣ファンとしてのショックや失望と上記のモヤモヤ、そして「うちのゲームの監督生も、物語の途中でいきなり知らない誰かに、これまでの活躍やグリム達との関係性を乗っ取られるかもしれないのか…?」などというものすごく嫌な想像の方が勝った。
それはそれとして、二章が始まった時に雄剣降板にショックを受けたのは私だけではなかったが、女子監督生の話題が独り歩きしすぎた印象もあり、一部の人から「男子監督生派と女子監督生派のケンカ」と揶揄されていたのも居心地の悪いものだった。
いや、私、ゲームは女子監督生のイメージで遊んでるけど、コミカライズは雄剣くんのお話としてずっと読みたかったのでショックなんですが…。
リドル推しの目線でも気になった。二章1話のダイジェスト上でのオーバーブロットの経緯は、幼少期の出来事や母親との事情には触れず、単に寮生達をルールと恐怖で統制していたら反発を受け、逆ギレしただけの子に読めるのだ…。
コミカライズ一章はリドルの幼少期がゲーム版よりさらに詳しく語られ、思惑はどうあれ全ての寮生の行動がオーバーブロットを招いてしまう苦しさも大好きだったし、始めも結びも雄剣と関わり綺麗な物語になっていると感動していた。
それが、雄剣とは別人の物語で「読者の見ていないところで、すでに終わった過去」になってしまい、こんな風に描かれるなんて…。
(…と今でも思ってはいるものの、やはり雄剣とは別人の物語である三章において、一章を描いたコヲノ先生自身に「雄剣と対峙した一章でのオバブロリドルの絵」を「宥太の過去」として使いまわされる扱いと、どっちがマシなのかすごく迷う。こんな二択、嫌だ……)
それに、コミカライズ二章でリドルと協力し一緒に戦うのは、一章で対立した後に和解した雄剣であってほしかった……。
どの監督生が学園に来ても物語は同じように進むから、省略しても問題はないと言うのだろうか?
では、なぜ雄剣の物語にはゲームには無い入学式とドワーフ鉱山でのリドルとの因縁があったのか?なぜデュースやグリムに剣道部の後輩を重ねたのか?なぜ剣道でオバブロリドルと戦ったのか?
コミカライズ監督生の個性を尊重する気が本当にあるのか…と言いたい。
応援していたコミカライズから大好きな雄剣が消えてしまったばかりか、言いたいことがたくさん出てきてしまったあの日。
しかし、恐ろしいことにこれは雄剣ファンの苦難の始まりに過ぎなかった……
(後編に続く)