わくわく公式派生作オタク

「原作では見られないオリジナルストーリー!」にわくわくが止まらない異端のオタク

【漫画版ツイステ】伊勢海老くん込みのすれ違いが闇堕ちへ誘っていく第3巻

色々あって(自分や近しい人の身に何かあったとか、仕事が辛いとかそういうことではありません)、「明日の自分が生きてるイメージが湧かない」という記事を書こうかとも思ってましたが、『わくわく公式派生作オタク』なのに『わくわく』要素がねえ…。と思ったのでやめました。

今回の記事の内容やツイステとは無関係です。おなかいたい

 

 

 みんなー!!

 やり方は間違っていたにせよ、自分なりに信念を掲げてより良くしようとしていた子の闇堕ち、好きですか?

私は大好き〜〜〜!!

 

 はい。

 

 

 発売から月日が経ってしまったが、『ツイステ』一章のコミカライズ版は3巻収録分もかなり読み応えがあった。

 

 「ボクのこと何も知らないくせに!」と叫ぶリドルを、エースが「知るわけねーだろ、甘えてんじゃねーよ!」と突き放すシーンなど、漫画ではお前本当に主人公側か!?と思うほどダーティーな顔をしており(そこが好きだが)、やはりこれはそんなことなど関係なくヴィラン達の物語だと作画面でも伝えてくれる。

 

 見開きを思いきり使った、エースがリドルの顔をぶん殴るシーンは迫力があり、この情け容赦のなさはジャンプのバトル漫画を読んでいるのかと錯覚するほどだ。

 さらに、地に転がってから起き上がって茫然とするリドル(おでこカワイイネ…)の表情が、ゲームの「ボク、殴られた…?」という台詞がなくとも、彼の心境を十分すぎるほど伝えてくれる。

 頭から転げ落ちる王冠は紙版の帯に書かれた「綻びはじめた女王の規律」を思わせ、絶対的な支配者としての余裕はここから一気に崩れていくこととなる。

 

 コミカライズでは、オーバーブロット寸前になると額からべったりとブロットが垂れてくるオリジナル描写が追加され、それが涙に見えたり、真っ黒い瞳がブロットに蝕まれた心の象徴のようだったりと、より視覚的に追い詰められたリドルの痛々しさを訴えてくる。

 そして、リドルがついにオーバーブロットし姿を変えるシーンは、まるで闇堕ちしたプリキュアの変身のように非常に気合いが入っており、ストーリー展開では大ピンチながら美しさと妖しさを感じさせる絵に仕上がっている。

 これは心から第二章以降のオバブロ組がどう描かれるのかに期待せざるを得ない……。

 

 

 さて、突然何言い出すんだコイツと思われるだろうが、自分は「誰か一人が絶対的に悪い」というよりも、「複数の登場人物のすれ違いが、結果的に最悪の展開を招く」話の方が好きかもしれない。

 これもまた、ツイステとの相性の良さの一因になった気がする。今回の内容がまさにそうだ。

 

 ゲームでは寮生の一人がリドルに生卵を投げつけるだけだったが、コミカライズでは(ノベライズでも)他の寮生達も物を投げて罵倒。不満の噴出がより強調される。

(そんなシーンなのだが投げる物の中にキセルが混ざってるのが気になる。いや『ふしぎの国のアリス』のイモムシのオマージュなのはわかるが、誰か喫煙してんの!?)

 

 彼らは卑怯ではあるが、ルールにがんじがらめにされ寮長に怯えて生活してきたのをこの場面までに見てきているので、一概に非難できないのも確かだ。

 一方で、リドルもやり過ぎではあったが、自身の過去から「厳格な指導こそが相手のためになる」と信じていたし、「ボクだってやりたくて首をはねているわけじゃない」と言っていたのは本心だろうし、この時の心情を想像するとかなり辛い……。

 

 『誰がこの事態を招いてしまったのか』と考えると、

・リドル

・モブ寮生達

(両者のフォローは上記の通り)

・リドルのやり方に思うところはあったが、それを表に出さなかったトレイとケイト

(しかしトレイの場合、エースには非難されたもののリドルへの気遣い・幼少期に母のルールを破らせてしまった負い目が根底にあった。

私個人は、ケイトも二人に配慮して、「本当にこれでいいわけ?」と投げかけつつ波風を立てずにいたのではないかと考えている)

・リドルの威厳に傷をつけ、意図せずモブ寮生を煽ってしまったエースとデュース

(だが彼らが逆らわなければ、リドルは自分を省みるきっかけを得られず、後にもっと悪い事態になっていた可能性が高い)

 

 つまりハーツラビュル全員が絶対に悪いとも悪くないとも言い切れず、すれ違った結果なのだ。当然、受け手によって感じ方はそれぞれ異なるから、あくまで私の印象だが。

(などと書きつつ、「問題の大元はリドルの母親では?」とも捉えられるのだけれど……。

物語の中心は『厳しすぎる母親を背景に持ったリドルはどうなるのか、周囲はどうするのか』であって、『母親をどうするのか』とはまた別だと私は考えている。

これは他のオバブロ組ともいくらか共通していると思う)

 

 3巻において私がおおいに拍手を送りたいのが、このすれ違いに伊勢海老監督生こと円満くんも絡ませたところだ。

 

 集団でリドルへ不満をぶつける寮生達に、円満は本気で怒りを露わにし、彼らを制止する。

 助けたリドルに敵意を向けられようが、初対面でエースに馬鹿にされようが、2回謝ったのにレオナに顔を蹴られそうになろうが怒らなかった彼が……。

 

「選手に野次を飛ばし、さらには物を投げつけるなど……恥を知れ!」

「これ以上非礼な行為を続けるのなら、この円満雄剣が相手になるぞ!」

 かっっこよすぎるが??

 豪胆で真面目で情に厚い剣道男子という、コミカライズ独自の主人公の魅力が、ここに凝縮されていると言えるだろう。

 

 同時に、本人の意図がどうであれリドルがオバブロへ追いこまれた原因の一つとなったシーンである。

 円満はリドルに「大丈夫か?」と声をかけるが、彼の顔はまさにかんしゃくを起こしたハートの女王のように、怒りと屈辱で歪んでいた。

 これは第一話での二人とよく似たシチュエーションとなっており、リドルは「円満にかばわれ心配される屈辱」を再び抱いてしまった。

 

 円満の我が身を挺して他人を護る気高さ、優しさこそがリドルに追い討ちをかけてしまう。

 イレギュラー的な存在の彼も、すれ違いと無関係ではいられないのがすごい。好き。

 

 

 また、今回もモチーフとなったディズニー映画のオマージュが見られるところも良い。

 チェーニャが去る時、尻尾の紫のシマだけがリボンのように残って消える演出は、ディズニーアニメ版『アリス』のチェシャ猫が、森でアリスの前から消える場面にもある。

 なんでもない日のパーティーでラッパを吹いていたのは、雑誌掲載版だとモブキャラらしい無個性な寮生だったのが、単行本では丸メガネをかけたウサギの獣人属という『アリス』の白ウサギを連想させる容姿に描き変えられている…など。

 

 あとティーポットの中の眠りネズミがまんま『アリス』で、「ディズニーの動物の顔」なのも可愛い。東京ディズニーランドの「アリスのティーパーティー」におったな……

 

 

 雑誌掲載分はついに最終回を迎え、1月号からは第二章の連載開始が予定されている。

 次巻も私に精神的な生命力が残っていれば感想を書きたい。残ってるといいなぁ……精神的な生命力がなんなのかはわからんけど……