わくわく公式派生作オタク

「原作では見られないオリジナルストーリー!」にわくわくが止まらない異端のオタク

【小説版ツイステ】『真紅の暴君』を美しく残酷に彩るノベライズ

 

hijikidays2.hatenablog.com

 

 前回書いた通り、ツイステのノベライズ版を一度では語り切れなかったので、今回は補完や文章の魅力について書いていく。

 また、前回ではあまり触れなかったハーツ上級生組の話も詳しく書いてみた。購入するかどうか考えているファンの方の参考になれば嬉しい。

 

※この記事にはノベライズ版(プロローグ〜第一章)の内容のネタバレが含まれています。

 

 個人的に一番フォローされて良かったのは、「監督生ってどうやって授業についていってるの?」という疑問だ。

 飛行術の授業ではバルガス先生が特別に用意した筋トレメニューを一人でこなしている、当然異世界の歴史の知識などないのでトレイン先生から基礎的な本を貸してもらっているなど、もちろんゲームも同じ設定とは限らないが納得の回答を示してもらえた。

 

 また、デュースが不良時代に魔法の使えない人間を馬鹿にしていたことで監督生に負い目を感じたり、リドルがなぜエースに母の厳しい教育を知られているのかと疑問を持ち、直後にトレイが話したと気づいて激昂したりする描写は、「確かに、ゲーム中にあってもおかしくなかったよな」と感じさせる。

 何気に「獣人属は祖先が動物」と明言されているのも設定オタクにはたまらん。

 ゲームでも、比較的最近公開された話で「レオナはライオンの遺伝子を継いでいる」と語られていたが、そういうことなのだろう。単に『ケモ耳枠』なんだろうなって思ってました

 

 あと、オンボロ寮のゴースト達の出番が増えているのも大好きなポイント。

 学園生活について優也にアドバイスしたり、エースとデュースが来て喜んだり、寝具や朝食を持って来てくれるなど、優也・グリムと合わせて「オンボロ寮ファミリー」のようで心を温まらせる。

 

 

 そしてリドルくんのしんどさ〜!ゲームよりパワーアップしてないですか?いいぞ。

 特に印象に残ったのは、オーバーブロットしたリドルと、『へその緒のようなブロットでつながった』怪物のオリジナル描写。プレイ済みの方ならご存知の通り、顔が瓶で体がハートの女王のアレである。

 その怪物が後ろからリドルを抱きしめるように包むと、リドルは安心して「そうだよね。やっぱりボクが全て正しいんだ」と微笑む。ずっと求めていた母の愛を、大きな女性の形をした怪物が与えているのだろうか?

 しかし、優也にはその怪物がリドルの意識を吸い取っているように見えているのだ。

 

 さらに、小説でより心情が言語化された分だけ、回想シーンの辛さがとんでもない。

 トレイ・チェーニャと遊べていたのはたったの一~二か月で、二人は自分を忘れてしまったかもしれないと思っていたり……。

 そして目覚める直前、リドル自身も心の奥では母親が自分の求めている愛情をくれないとわかっていたのが示唆されている。つらい

 

 暗い話になってしまったので癒しのコーナー…トレイの家に行ってみたら弟と妹がリドルに興味津々だったのがカワイイ。

 

 また、短いがトレイの視点で語られる場面もいくつかあり、リドルと寮生達の板挟みになりつつ複雑な心境にあったのが具体的にわかる。

 だからこそ、オバブロリドルを前にしたオリジナル台詞「俺のせいだ。だからちゃんと俺が、お前を止めてみせる」がかっこよすぎるんだよな、先輩……。

 そして戦いが終わった後、リドルに本心を伝えるシーンでは、第三者の優也にさえ、目の前の人に誠実であろうとしているのが痛いほど伝わるほどだった。

 

 なお、前回「優也って、人間関係を避けてきた割にはすごく『他者を理解する力』があるよな」と書いたが、関係性レポが上手いのも特徴である(関係性レポとは)

 

 ケイトも、文句を言いつつ「ここで見捨てるとかさすがに無いし」「トレイくんだけの問題じゃないでしょ」と協力してくれるところ好きすぎる……。

 それにノベライズ版を読んで、リドルをなだめながら寮生もフォローし、なおかつ副寮長のトレイと心労を共有していて、その上で普段気さくで陽気なキャラを意図して作っていそうなケイト先輩ってすげーなあ…と改めて思うなどした。ほんとに18歳?人間レベルたけえよ…(人間レベルとは)

 

 ボロボロになったハーツラビュルの庭を直したものの、花は全部散ってしまったし、見苦しさを完全には取り繕えない。だけど、ケイトは満足そうに撮っていた。

 マジカメ映えはしないけど、難しくともここからハーツラビュルをやり直していく。そんな景色こそがケイト先輩の本当に見たかったものだったのかな、と。読んでそんな風に感じたシーンでした。

 

 

 で、他にもノベライズの醍醐味(と私が勝手に思っている)といえば、キャラクターの外見描写。みんなイケメン美少年に書かれてんなぁ!!

 中でもすごいのがリドルのまつ毛描写で、扇のようなまつ毛と書かれているわ、涙がまつ毛の縁に引っかかっていると書かれているわ、どんだけまつ毛ふさふさやねん…!美しっ…!

 

 グリムもふわふわに書かれていてかわいいっ。優也と初めて会った時、「子供が全身で抱きつくのにちょうど良さそうなサイズ(のぬいぐるみ)」と思われており、たとえなのだが小さい子に抱きつかれているグリムが容易に想像できる。かわいい…。

 あと、ご存知の通り監督生はグリムを監督する立場なのだが、当のグリムは(子分はオレ様が一緒にいないとどうなるかわかんねえ)みたく思ってるのすき…ワイらの親分…

 

 

 ゲーム同様、二章への布石で終わっているのだから、反響次第で優也が主人公のまま続刊を出してくれるのだろう。いや、出してくれると信じている。

 前回と今回の記事が、わずかでも力を添えられれば幸いである。

 

 

 

 ちなみに、特別ゲーム版との大きな設定変更はない原作キャラ達だが、実はハーツラビュルからサバナクローの寮生に変更されたキャラがいる。

 もちろんネームドキャラではなく、ファンから温玉先輩と呼ばれているモブだ。これは、監督生がレオナに遭遇するシーンと、ミステリーショップを出た後デュースが激怒するシーンが統合されているためだ。

 いや、コミカライズ版もそうだが温玉で絡んでくるところはカットされているので、ここでは生卵先輩と呼ぶべきなのだろうか……。

 

 それにしても、地味にラギーが「痩せた少年」「痩せぎす」と表現されているのが心配になってしまった。学園の食堂でいっぱいごはんたべて