わくわく公式派生作オタク

「原作では見られないオリジナルストーリー!」にわくわくが止まらない異端のオタク

【ネタバレ注意】楽しくも切ない思い出…と怖すぎる犯人のギャップがすごい『警察学校編』

  現在、このブログはアニメ版のオリジナルストーリーや劇場版の記事ばかりだが(小説版や脱出ゲームの話も少ししたけれど)、『名探偵コナン』に限っては「原作者以外が描いた公式漫画」の話しか書いていない。

 

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 不思議といえば不思議であるが、『コナン』といえばタイトル通り「小さくなった名探偵」である江戸川コナンくんが活躍するミステリーものという、幼少時代からすりこまれたイメージとのギャップが自分には面白いのかもしれない。そのうち劇場版の話も書いてみたいですけどね。

 

 というわけなので今回は、人気キャラ・安室透=降谷零と諸伏景光・松田陣平・萩原研二・伊達航の警察学校時代を描いたスピンオフ漫画の感想です。

 

 「わくわく公式派生作オタク」的には、原作では名前しか登場せずアニメ版の追加シーンで初めて容姿と台詞が与えられた萩原が、その後スピンオフのメインキャラクターになったことは興味深いものです。

  なおコナンくんは全然登場しません。7年前の話なので新一として小学生やってると思うけどもね。

 

 

※重要なネタバレが含まれておりますので、上下巻読了後の閲覧を強く推奨します

 

  『警察学校編』、どこから始まるのかというと降谷と松田が傷だらけで殴り合うところからだ。これだけだと不良がテッペン獲る漫画ではないかと誤解されそうだが、警察官を目指す5人の青年を描いた話なので安心してほしい。ほんとに。降谷さんの素はヤンチャ説、だいたい合ってた。

 

 本作は二話完結形式で、一人一人のバックボーンを明かしつつ彼らの活躍を描く横軸と、景光の両親の仇を追う縦軸が展開されていきます。

 

 ほぼ全編に渡って、今では「何やらせても赤井さんさえ絡まなければ完璧な、三つの顔を持つ謎の男……」って感じの降谷さんが(この頃からかなり優秀ではあるが)仲間達と普通の若者らしい反応をしているのがかわいく、ほっこりし、そして切ない。

 松田が警察官を目指した理由を聞いて吹き出したり、伊達に彼女がいると知ってみんなで点目になった後絶叫してるのが好きです。あとツンデレという概念を知ってたとこ。

 松田との「返してく零!」「つまらん2点!」のやり取りなんて最高だね。そこで零だけに0点にしないあたり、やさしい。まあ、本当は気に入ったらしいよ(この時の萩原の「ちとジェラっちまうねぇ」って言い方もじわる)

 しかも合コン第一声が「おいヒロ!このお通し……すげーうまいぞ!ですよ かわいすぎなのか?????

 でも「ある人を見つける為さ……とても大切な女性をね……」と髪をなびかせながら明かすあたり、絵に描いたようなイケメンムーブもさらっとやってのけるのもこの頃からだなあと思います。

 しかし、この『警察学校編』では景光や松田たちの家族の情報が明かされた一方で、降谷さんの家の事情は相変わらず謎のままですが……これは本編の今後に期待するしかないでしょう。

 

 そして今の降谷さんの持つ超絶スキルが仲間達の影響によるものと描写されたのもエモいところで、あの凄腕ドライビングテクニックは萩原譲りの様子。……萩原や降谷たちががんばったおかげなのですが、あそこまでやって死人出なかったのすごいな!?と思ったけど考えてみれば『コナン』のカーアクションではよくあること。 

 クライマックスで松田に爆弾処理を伝授されるシーンでは、『純黒の悪夢』でのあのセリフもしっかり拾ってくれていて良かったです。

 この頃は料理が全然できず、後に料理上手のヒロから教わったのだそう。ポアロで美味しいハムサンドを作ったりパン屋のおじさんにストーキングされたりしたのもヒロのおかげだったんやなって……。 ありがとうな!!(あの純黒プレ回が好きなので)

 

 

 5人の友情は見ていてほほえましくも、やっぱり切なくなっちゃいますね……。この後、降谷さん以外は全員殉職する運命が待ってるんですから……。

僕もそっち側がよかったよ……

 これ、あくまで「教官を足止めする役より、一緒に掃除する方がよかった」という意味なのに、なんだか心臓がキュッとなってしまった……。

 『ゼロの日常』で降谷さんの夢に出てきた時の言葉、「早く来いよ!」なんだよな……

 

 

 伊達が恋人・ナタリーに電話するシーンもあるけど、彼女もこの先どうなるかを知っていると哀しい……。

 それはそれとして、青山先生によると伊達は彼女の前じゃ照れまくっていてナタリーがリードしていたという話が意外でかわいいのだった。好きな娘にはうぶな班長 いいぞ。

 

 

 ストーリーに関わらない本編キャラの情報がちょこっと出てくるのもよい。

 教官から「殉職した先輩刑事の娘」が刑事になる目標を叶えた時のために、彼の愛車を預かっていると聞き、可愛かったりして…と言う萩に陣平ちゃんが「刑事になりたいってんだから、どーせ男勝りのジャジャ馬」と返すくだりなんてニヤリとさせられる。

 余談だが、この時マツダRX-7を見て「べ、別に…あ、あんな派手な車…しゅ、趣味じゃないよ…///」とまさにツンデレのような反応をするゼロに(趣味なんだーー♡)と吹き出すヒロ、二人とも本編のJKとさしてノリが変わらん。すこ。

 

 長野の孔明こと高明さんも、両親殺害事件の真相をめぐり弟の助けになってくれました。当時中学生で「父と母が死んでいる…」ってめっちゃ冷静に言ってたのはちょっとビビったけど。

 あと小五郎のおっちゃんは、警察学校の最初の射撃訓練で的のど真ん中に全弾命中させたそうで、教官の印象によく残ってた模様。おっちゃんも本当はすごいんですよ。

 

 

 ……などと見所のたくさんある警察学校編なのだが、終盤でついに景光の両親殺害事件をみんなで解決することになる。なるのだが、その犯人が記事タイトルに書いた通り怖い。とにかく怖い。

 『コナン』は殺人事件をほぼ毎回扱う都合で、殺人犯が劇中大量に出てくる。で、中には「こんな動機で人を殺すなんて…」とネットでネタにされるのもいる。しかし今回の犯人の場合は、身勝手な動機ではあるがもはやそういう次元を通り越した何かなのだ。

 

う、歌が聞こえて…

 

父の声でも母の声でもない…甲高い作ったような猫なで声で…リズムにのせて繰り返し繰り返し同じフレーズを…

だ、だから恐る恐る…押入れの隙間からのぞいたら…

血まみれの包丁を手にした男が口ずさんでたんだ…「もおいいよ~♪出ておいで~~♪」――って…

 この時点でもう相当ホラーなんだが、まだまだ序の口なんだよなあ……。

 

 あの日犯人が探していたのは、景光が長野にいた頃仲の良かった有里ちゃんという女の子だった。事件の前に盲腸で亡くなっていたのだが……。そして現在、警察学校の近くに住んでいるらしい、彼女によく似た子供が行方不明になっている……。

 

 小学校の先生だった景光の父は、盲腸炎を起こした有里を病院に連れて行ったがそのまま亡くなった。有里は犯人の娘で、我が子の死を受け入れられず先生がさらったのだと思いこみ殺害したのではないか……と景光は推測。

 いやいや、いくら娘を喪ってショックだからといって、それで殺されるなんて理不尽すぎるだろ……という気持ちがよぎったが完全にこの推測通りだった。

 

 そしていざ犯人のもとへ乗りこむと、よく似た子供を「有里」と呼び爆弾で心中をはかっている!

景光「その子は有里ちゃんじゃない!!」

犯人「違うものか!!お前が会わせてくれたんじゃないか!!」

景光「オ、オレが!?」

犯人「本当はあの日…クローゼットで寝ているお前に気づいていたが…殺さないでやったんだよ…

有里と仲が良かったお前のそばにいれば…お前の親がどこかへ隠した有里に…いつか会わせてくれると思ってな!」

 

(・Д・)…………

 

(;゚Д゚)…………!?

 

 乗りこむ前に景光が「15年前に長野で両親を殺した犯人が、東京で偶然オレの周りにいるなんて……」と疑問を口にしていたが、なるほどそういうことだったのねーってなる以前に怖いんだよだから!!!

 景光の両親を殺した理由だけでもう相当狂っているのに、さらに狂気の上乗せが止まらない。長野から東京に来てまで、ヒロがゼロと一緒に子供から大人になって警察学校に入るまで監視してきたなんてうらや…怖すぎる。

 「有里はまだ生きている」と思っているなら景光と同じ22歳になってると考えるはずなのに、享年に近い子供を有里だと認識しているし。このへんはストーリーの矛盾とかじゃなくマジで犯人の心の闇だろう。

 

 この犯人が恐ろしいのは、思いこみとはいっても「もっとちゃんと話し合っていれば…」というようなことではなく、普通に考えればありえないとわかるはずの非現実的な妄想にとり憑かれて犯罪を犯し続けていること。

 それだけ娘を愛していたのだろうし、妻と母に続き娘まで喪ってしまった点だけは同情するが、諸伏家には何の非もなく理不尽としか言い様がない。むしろ、景光の父親は有里を救おうとしてくれたのに……。誘拐された子供と周辺の住民だってとんだとばっちりだ。

 

 だが、そんな犯人の命をも身を挺して守った景光は、この時点ですでに警察官の鑑と言えるだろう。

  犯人を追うにあたって、みんなを巻きこむわけには…と思いつめる景光を、仲間達が「今までだって力を合わせてなんとかしてきただろ!」と励ますのもすごくいいシーンだったしね。

 

 なお、犯人捜しがストーリーの中心になってくるのは下巻の中盤からなのに、実は上巻の時点で初見ではまず読み飛ばしてしまう伏線があり、クライマックスで回収されるのは上手い。……まあその伏線も、一人暮らしの犯人が「娘のおやつを買いに来た」と発言していた(※この時点では誘拐してない)かなり怖いものだが……。

  どうでもいいが私は当初両親の殺害には黒の組織が関わっており、後に彼がスコッチとして潜入したのと関係があるのでは……と予想していたがそんなことはなかった。サイコパス一般人だった。

 

 

 などと本当〜に色々あったものの5人は無事卒業し、現在へ……仲間達は命を落としたが、彼らの遺したものは今の降谷さんに受け継がれており、某組織への潜入任務に向かう真剣な表情で幕を閉じる。

 ……正直、ラストのページはすごくカッコいいと同時に打ち切り最終回によくあるやつっぽく見えるのだが、「組織との戦いはこれからだ!」なのは事実なので、こうなるのは仕方あるまい。続きは原作でな!!

(警察学校時代のことを思い出したせいか、梓さんに「おいおい…君がケガしてどうする?」と話す『安室透』が貴重で良い)

 

 『警察学校編』に流れる切なさは、読者には警察官を目指したことも友人を亡くしたこともなくとも、「卒業したら疎遠になってしまった仲間達との、戻らない日常」を知っていれば伝わってくるんだよなあ。思い出はかけがえがないけれど、それを懐かしむ気持ちは多くの人と共有できる。そういう郷愁とキャラクターの魅力、過去が明かされる楽しみを味わえる良いスピンオフだった。

 

 

 

 でもやっぱ犯人、怖いな……。